Archive for the ‘作り手’ Category

太田潤さん

火曜日, 8月 7th, 2012

6月にお訪ねした際、嬉しいことに制作現場を拝見することができました。
ざっくりとですが、まずはその様子からご覧ください。


成形中の太田さん


成形が終わったガラスをここに入れて冷めるのを待ちます。


しっかり冷まして取り出した後、この突起を削って滑らかにして、


別の品の裏側で恐れ入ります… こんな具合に仕上げます。

ちなみに当店で扱っている硝子は太田さん以外の作り手のモノもすべて、この跡があります。
触るとザラっとしていますが、手や机を傷つけないよう皆さん丁寧に処理してくれています。
気にされる方もいらっしゃると思いますが、その点はどうぞご安心ください。

太田潤さんの硝子は再生ガラスで、日本酒や梅酒の瓶、窓ガラスなどの廃材を使います。
上の画像は材料の廃瓶が置かれている青空倉庫。これらが下の画像の品々に姿を変えます。

薄く作ると壊れやすくなってしまうため、どれも厚みがあります。この厚みを見ると重そうに
感じる方が多いようですが、実際に持ってみたお客様からは「あら、軽い」という感想をよく
お聞きします。ご来店の際は指の跡を気にせずに、どんどん手にとってお確かめください。

再生ガラスが厚みある、どこか野暮ったい印象のモノになるのは宿命かもしれません。
けれどセンスなのでしょうか、太田さんの硝子はただ野暮ったいだけの硝子ではなく、
素材感と造形が相まってむしろ粋、なんて思っています。


影、色、形、じっくりご覧ください。

これまでは少しの紹介に留まりましたが、10日からの「色硝子」で多数ご紹介いたします。
何が届くか非常に楽しみです。どうぞご期待ください。

岩井窯、山本教行さん

土曜日, 1月 21st, 2012

先日もお伝えしたとおり、3月31日から4月8日に当店で初となる展示会を開催いたします。
岩井窯・山本教行さんをご存知の方は多いと思いますが、当店なりにご紹介いたします。

山本さんは1966年にバーナード・リーチに会い陶芸の道を志し、出西窯での修業を経て
現在の地に窯を構え作陶されています。昨年開窯40周年を迎えられましたが「あと20年」、
「まだまだやってみたいことが沢山ある。」と仰います。まだまだ貪欲でいらっしゃいます。

岩井窯の敷地には参考館があり、そこには山本さんが作陶の参考にすべく集めた古物や
先人の作品が並んでいるのですが、個人の蒐集とはいっても民藝館と同等かそれ以上と
思えるほどの質と量です。若い頃から貪欲でいらっしゃいます。


奥が参考館(館内は撮影禁止のため外観のみ)。岩井窯へ行かれる方は必見です。

昨年ご来店の際は気になった品を手にとっては「これはどんな人が作っているの?」
「この色はなかなか出せないんだよ。凄いなー。」と、現在の作り手やモノに対しても
興味津々で実に楽しそうでした。

立場上「先生」と呼ばれることも多い山本さんですが、古いものや今の作り手の品からも
常に何か吸収しようとする意欲・姿勢は若い作り手から感じられるそれと変わりありません。
少しでも良いものが作りたい、まだ道半ばといった意識をお持ちなのだろうと感じます。


山本教行さん

以前に台風による水害で工房が壊され、蒐集していたモノも流されてしまったという想像に
苦しい経験がおありです。その時のことをお話ししてくれたときに「近くにこんなおっきな
スリップウェアの皿があるかもしれないよー」なんて笑って仰る姿が印象的でした。

当店でお付き合いのある若い作り手と話をしていると、自然と山本さんの話題になることが
あります。きっと若いころから貪欲でパワフル(今でも)な山本さんに何か感じるものがある
のだろうと思わずにはいられません。


塩釉フリーカップ


9寸皿


ミルクピッチャー

※山本さんの作品画像、こちらの記事にもあります。

「モノを買うってことはそのモノと一緒に過ごす時間が始まるってことだから。」とは一昨年
はじめて伺った際に聞いた山本さんの言葉です。

参考館や岩井窯展示スペースにいると、一作陶者としてはもちろん一生活者として丁寧な
生活をするために山本さんが丁寧に選んだモノに囲まれている、といった感じを受けます。
またそれらから学び、柔軟に取り入れ、作品に落とし込んでこられたことも感じます。

そんな山本さんの作品もまた、手にした人に色々なことを感じさせてくれることと思います。


使われている什器も見逃せないのです。


初めてお会いした時はここでお話ししました。後ろにいるのは愛犬ハナ。

店は始まって1年足らず、展示会も初めてなので常に恐縮気味ですが、初対面の日に
「君はまだ若いんだからどんどん、色々なことやってみなよ。」と言ってくださったことや
今までにお話しを重ねてきた中で感じたことを会に反映すべく、準備しています。

来月半ばにもう一度訪ねて最終打ち合わせ、展示の内容はその後に詳しくお伝えいたします。
というわけで山本さんのご紹介と薄っすら展示会の宣伝をさせて頂きました。ご期待ください。

岩井窯のホームページも是非ご覧ください。

中井窯

日曜日, 11月 6th, 2011

中井窯は1945年、初代の坂本俊郎さんが現在地に登り窯を築窯し始まりました。
吉田璋也さんの指導により復興された牛ノ戸焼、その脇窯とされています。

牛ノ戸焼との違いをよく聞かれることがありますが、坂本章さんによれば脇窯と
言っても元々同じ仕事をしていたわけではなく、土や釉薬ははじめから違うものを
使っていたそうです。

先代が牛ノ戸焼の名陶工、小林秀晴さんと懇意だったことが手伝ってか作風が
かなり似ているものもありますが中井窯に絵付けは無く、白と緑の色味は全く
違っています。牛ノ戸焼とは別と認識するのが正しいとのことでした。

現在は3代目の坂本章さんを中心に父上の坂本實さん、弟子として入られた
安田恵さんの3人が轆轤仕事を、章さんの奥様が型モノの仕事を担当されて
4人で制作されています。


5寸うべの皿


神代碗


三色染分皿8寸(左)、5寸(右)

緑色の器は様々ありますがガラス質の緑は森山窯、マットな質感の緑は中井窯、
なんて思っています。それに素材作りの手間を厭わずやられている白の色味と
質感も見逃せません。

三色染分皿にズーム。

湯呑みを4年ほど使い込んだらこうなりました。

外側の色味はこのとおり。


切立マグカップ

こちらのマグカップは数年前と少しだけ形が違っていて、私ごときが生意気ですが
取っ手が持ちやすくなって心地良く感じます。こういう変化を実感するとたまらなく
嬉しいです。先日中井窯の品を見て、ずっと同じことをしている、と仰ったお客様が
おられましたが、そんなことありませんよ、と言っておきます。

常に品薄が続いている中井窯ですが、先日お邪魔して注文分を引き取りがてら
注文分以外からも少し分けて頂きました。ここで紹介した品は店頭に並んでいたり
近日開始予定のonlineshop掲載のために保管してあったりですが希望のモノが
あればフライング大歓迎です。お気軽にお問い合わせください。

島岡桂さん

水曜日, 9月 7th, 2011

島岡さんの作品を初めて拝見したのはまだ筆谷桂の名で活動されている頃でした。
後に祖父の島岡達三さんの養子縁に入り島岡姓になられましたが、そんな立場上、
仕事をするにあたってプレッシャーが付きまとう時があったそうです。そりゃそうです。
ただ今は気負わずに制作されているとのことでしたし、お話ししててもそんな印象を
受けました。

地釉縄文象嵌6寸皿(径18cm高3.5cm)

打刷毛目小鉢、地釉縄文象嵌小鉢2種(全て径13cm高6.5cm)

達三さんがされていた技法・釉薬を受け継ぐ形で桂さんは勿論やられていますし、
同時に桂さんならではの作品だって勿論出てきます。極めて自然なことに思います。
だから桂さんの作品を見た人に「祖父から何を学んだんだ」と言われたことがあると
聞いた時はちょっとショックでした。

地釉縄文象嵌楕円皿(17.5cm×15.5cm高3.5cm)

地釉縄文象嵌角皿(24cm×24cm高6cm)

当店は桂さんの仕事をありのままに支持します。桂さんの仕事に達三さんの仕事が
自然と見える時はあります。でもそれを見ようとか、それが見たいとは思いません。

それにそんな残念な思い出話も涼しい顔で話してくれましたし、話題が逸れて音楽の
話をしているとどこかに消えてしまうのが今の桂さんであって、これからも楽しく仕事を
重ねていかれることと確信しています。

指描ジョッキ(11.5cm×8cm高10cm)地釉縄文象嵌ジョッキ(中:11.5cm×8cm高10cm、右:11cm×8cm径10cm)

ところで桂さんが仕事をされている益子は東日本大震災の被害を受けられました。
桂さんの作業場も相当な被害で、実は当店にも開店前に送って頂けるはずだった
のですが破損が多数あり、叶わなかったのです。

それが先日やっと到着し、待ちに待ったお披露目です。またさらに店内が賑やかに
なりました。後日小皿などもやって来ますのでご期待下さい!

鎬扁壷(11.5cm×8.5cm高12.5cm)

ONLINESHOPへの掲載は少し先になりますので、我慢ならない方はどうぞメールか
お電話でお問い合わせ下さい。

先日島岡家に二人目のお子様が誕生したそうです。心からお祝い申し上げます!!

前野直史さん

金曜日, 8月 26th, 2011

以前の記事でお名前と作品を1点ご紹介した前野直史さんですが、この度正式に
扱わせて頂くことになりました。先日到着した品々を早速テーブルに並べています。

だいぶ前から前野さんのブログを拝見していて、この人は陶芸オタクに違いなく
興味深い、と思っていました。6月にとあるきっかけでお会いできることになって、
大きな期待と少しの緊張感を胸にお伺いしてみると想像以上に熱心な方でした。
そして何より気さくな方で楽しくお話しさせて頂きました。

スリップウェア角鉢(22cm×14cm高2.5cm)、スリップウェア5寸鉢(径15.5cm高4.5cm)

スリップウェア小皿(全て径11cm高2cm)

スリップウェア角鉢(14cm×12cm高3.5cm)、スリップウェア浅鉢(径15cm高3cm)

スリップウェアに強く惹かれこの道に飛び込んだ前野さん、やはりスリップウェアに
関してはかなりのマニアです。ただそれだけではなく日本や朝鮮の古いモノからも
非常に熱心に学ばれています。作陶にのめり込んでいる前野さんそのものが作品
に反映されているように思います。

前野さんはご自宅で自身の作品も蒐集された骨董品も普段使いにされています。
お食事をご一緒に頂いた時はどこかタイムスリップしたような気分で新鮮でした。
ああいった生活もまた作品へ反映されているに違いありません。これは楽しいぞと、
自分も帰ってから怖がらずに古物を普段使いにするようになった次第です。

黄釉押紋皿5寸(径15.5cm高2.5cm)、黄釉押紋皿4寸(径11.5cm高2.5cm)

白磁6寸皿(径19cm高3cm)

白磁コップ(径9.5cm高11.5cm)、スリップウェア湯呑(径8.5cm高8cm)、
スリップウェアマグカップ(12cm×9.5cm高10cm)

白釉小壷(左から径6.5cm高8cm、径8.5cm高6.5cm)

ちなみに平山元康さんと以前から親しくされていて、弟子として修業していたのは
丹波の俊彦窯さん。不思議なもので「知り合いの知り合い」という間柄が実は既に
2つあったのです。いつかは繋がる縁だったということでしょうか。

そんな前野さんの作品を、これからスリップウェアを中心に様々ご紹介いたします。
どの品からも滲み出る前野流にご期待下さい。

スリップウェア深鉢(径30cm高8cm)